小児科・内科 桑原医院

広島市安佐南区の小児科・内科 地域のホームドクター「桑原医院」

管理栄養士のレシピ集

第54回 餅と栄養~消化・吸収

 お餅は、日本人の生活、行事、慶事には欠かせない存在として用いられてきました。
 しかし、お餅は炭水化物多くて太りやすい、喉に詰まるから危険と避ける方もいます。
 確かに食べ過ぎれば太りますし、よく噛んだり小さく切らなければ喉に詰まってしまいます。
 少し工夫をすれば問題なく使える食材を、それだけで避けてしまうのは少しもったいないですよね。
 お餅の特性を知り、デメリットを工夫でカバーして美味しくいただきましょう。

お餅の栄養

 お餅は、炭水化物、脂質、たんぱく質のほか、ビタミンB1やカリウムなどを含みます。ビタミンB1とカリウムは、疲労回復やむくみ予防に役立ち、熱を逃しにくい成分“アミロペクチン”も含むため、体を温め、代謝を促す効果まであります。
 カロリーはおよそ小サイズで83kcal、通常サイズで118kcalです。

 

お餅の消化吸収

 白米のうるち米と、餅の原料のもち米とでは、でんぷんのアミロースとアミロペクチンの配合割合が異なっており、白米とお餅の食感、消化のしやすさ、腹持ちなどの特性に影響します。

 白米ともち米に含まれているデンプンはアミロースとアミロペクチンです。
 白米にはアミロース割合20%アミロペクチン割合80%、もち米はほぼアミロペクチン100%です。アミロペクチンが多いほど粘り気が強く出ます。

 

 

 でんぷんが酵素で分解される時には、端から順番に分解されます。直線状のアミロースと枝分かれがあるアミロペクチンでは、端がたくさんあるアミロペクチンの多いお餅の方が、消化酵素が一度に多く作用できるので、早く多く吸収されます。そのため、同じ時間で糖の吸収量が多くなるので、食後の血糖値の上昇度も大きくなるといわれます。これらのことから、お餅単体では消化吸収が速い食材と言えます。

 

お餅と満腹中枢刺激

 満腹中枢は血糖値の上昇や脳内で分泌されるヒスタミン、その他多くの生理活性物質により刺激されます。

お餅はよく噛まないと喉に詰まるので、噛むことで咀嚼筋を刺激し満腹中枢を刺激するヒスタミン分泌を刺激します。また、前述したようにお餅は白米よりも血糖上昇が早いことも満腹中枢刺激に影響します。

 これらのことより、お餅は満腹中枢刺激する因子の血糖上昇やヒスタミンなどが揃っているので早く満腹になりやすく、余計な間食を防ぎやすくなります。

 

 

*余計な間食を食べないようにする、満腹中枢刺激効果を狙うのであれば、お餅に糖分の多いあんこなどと組み合わせて食べるのではなく、消化吸収に時間がかかる物、よく噛まなければならないもの、例えば食物繊維の多い野菜やキノコ類や海藻、タンパク源と組み合わせた鍋やお雑煮のような料理にして食べると、更に腹持ちがよくなるのでお勧めです。

 

お餅を食べる時の注意点

 お餅は粘り気が強く、噛み切りにくいことも喉に詰まらせやすい原因です。美味しく、安全にお餅を食べるための注意点をご紹介します。
●食べやすい大きさに切る
 かむ力や飲み込む力が弱い方は、市販されているお餅をそのまま食べるのではなく、小さく、厚さも薄く切る
●よく噛んで食べる

●お餅を焼いた後は湿らせる

●汁物に入れたり、大根おろしなど水分のあるものと和える

●食べる前に水分を十分に摂り、喉を潤して通りを良くする

●口の中の水分が飲み込めてから次の一口を食べる

 

文責/桑原医院 管理栄養士 坂井エリサ(さかいえりさ)