小児科・内科 桑原医院

広島市安佐南区の小児科・内科 地域のホームドクター「桑原医院」

管理栄養士のレシピ集

第34回 食物アレルギーのこと

 

 食物アレルギーは子どもに多くみられるのが特徴です。なぜかというと、成長の途中であり、消化機能が未熟で、アレルゲンであるタンパク質を小さく分解(消化)することができないことが原因の一つと考えられています。そのため、成長に伴って消化機能が発達してくると、原因食物に対して耐性(食べられるようになること)がつく可能性が高いようです。

もしかして?と思ったら

 食事中、食後にアレルギーで認められる症状(特に多いのが、かゆみや蕁麻疹・むくみや湿疹などの皮膚症状です。口の中の痛みや違和感、嘔吐や下痢、咳やぜいぜい、ぐったり、元気がないなど)のどれかの症状がでた場合は、食物アレルギーが発症していることがあります。症状が強い時はすぐに病院を受診しましょう。
 口の周りが少し赤い、嫌がって吐き出してしまうなどのはっきりしない場合は、食事日誌を作って、食べた食品と症状がでた時間などを記録しておき、2回以上同じ症状が出た場合、アレルギーである可能性が高くなります。
 アトピー性皮膚炎などがある場合は、痒みや湿疹が赤くなった程度では関連がわからないことがあります。
 この場合も日誌に記録しておくと原因がわかることがあります。病院受診時にみてもらいましょう。

 

食物アレルギーのつきあい方は?

乳幼児期
*食物アレルギー発症のほとんどは乳児期(0歳児)で、その多くは食物アレルギーの関係する乳児アトピー性皮膚炎です。スキンケアや十分な軟膏療法を行っても、原因物質を除去しないとなかなか改善しません。しかし、治りにくい湿疹全てが、食物アレルギーとは限りません。〝念のため″〝とりあえず″のために、特定の食物を除去することはお勧めできません。

 

離乳食
●食物アレルギーでも、離乳食の開始や進行を遅らせる必要は基本的にありません。
●初めての食物を与える時は、お子様の体調のよい時に、新鮮な食材を十分に加熱し、少量から与えましょう。平日の昼間に与えれば、症状が出た場合に医師の診察を受けやすいです。
●乳児期の原因食物は鶏卵、牛乳、小麦が90%を占めます。離乳食開始時に利用される米、イモ類(ジャガイモ、サツマイモ)、野菜類(ダイコン、ニンジン、かぼちゃなど)が原因食物となることは多くはありません。
●保護者の不安や自己判断により、〝念のため″にとして、医師の指示以外の食物を除去しないようにしましょう。

 

妊娠中・授乳中の母親の食物除去

●母乳が原因で患児の症状が悪化する場合には、お母さんも原因食物の除去を指示されることがありますが、お母さんが患児と同等の除去を長期間必要とすることは少ないです。お母さんが食物除去をする場合には、お母さん自身の栄養状態にも気をつけます。
 ハイリスク児(両親・同胞に1人以上のアレルギー患者がいる児)に対して、アレルギー性疾患の予防を目的とした妊娠中のお母さんへの食物制限は、十分な根拠がなく勧められません。食事制限することによる妊婦の体重増加不良や胎児の成長障害の方が心配されます。

①:正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去

①食べると症状が誘発される食物だけを除去しましょう。
〝念のため″〝心配だから″といって必要以上に除去する食物を増やさないように。
②原因食物でも症状が誘発されない〝食べられる範囲″までは食べることができます。

★医師が指示する〝食べられる範囲″とは?

 食物アレルギー症状が誘発される量は人によって違い、極微量から数グラムまで幅があります。この〝食べられる範囲″とは、食物アレルギーの人にとって症状が誘発されずに安全に食べられる原因食物の量を指します。これは食物経口負荷試験の結果などをもとに、医師から日常生活で安全に摂取できることを考慮して個々に指示されます。その範囲以内であれば原因食物でも制限する必要はなく、食べていくことが推奨されます。

②:食物除去によって栄養が偏らないよう、バランスよく食事をしましょう。

 最小限の食物除去を行いながら、主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスの良い献立から、十分な栄養素を摂取できるようにします。牛乳アレルギーのカルシウムや、魚アレルギーのビタミンDなど、特定の食物の除去で不足しやすい栄養素がある場合は、それを補う食品を十分に摂取できるようにします。

 

入学・入園児の手引き

 食物アレルギー児の受け入れと安全な給食の提供ができるように情報提供(保育園におけるアレルギー疾患生活管理指導表、学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)、診断書、指示書)を医療機関から出してもらうことが大切です。園・学校での給食対応が困難な場合は、弁当持参を選択します。
 また、内服薬や、アレルギー症状が起こったときの自己注射薬の取り扱いも話し合っておきます。
 強いアレルギーをもっている場合は、アレルゲン食品と接触したり、吸い込んだりしてアレルギー症状が出現することがあります。牛乳パックを閉じるときの牛乳の飛散、豆まきでのナッツ類の粉を吸い込んだり、誤食したりすることがないように注意してください。
 *病院では診断を決めるために、食事の様子を聞いたり、血液検査や実際に少量ずつ疑わしい食物を皮膚につけてみる検査(ブリックテスト)、又は食べさせてみる検査(食物負荷試験)をして判断します。

 

 

文責/桑原医院 管理栄養士 坂井エリサ(さかいえりさ)