第55回 花粉症と生活習慣
花粉症によって引き起こされる症状は、頭痛やだるさにもつながり、日常生活に必要な集中力や判断力の低下を招いてしまい、自分の能力が充分に発揮できなくなります。
少しでも花粉症の症状を軽くするためには、日頃から免疫力をたくわえて、カゼをひかないなど、体調そのものを良くすることが重要です。免疫力には日頃の生活習慣が大きく影響します。
免疫と腸内細菌バランス
不規則な食事や生活だったりアンバランスな食事やストレスなどで、腸内環境が悪化し腸内の悪玉菌が多くなると、悪玉菌が作り出す有害物質も増え、便秘や下痢、肌荒れやアレルギー等を引き起こすこともあり、花粉症にも影響するといわれています。
体の中で、最も免疫細胞が多く存在する場所は腸です。
体内の免疫機能の約70%が集まっているとされています。その腸の免疫力を強力に支えているのが腸内細菌で、様々な細菌がバランスを取りながら腸内環境を良い状態にしています。
健康な腸内では、乳酸菌のような善玉菌が悪玉菌の定着・増殖を抑えています。
また、善玉菌には、有害物質を排出するのを助ける作用もあります。
そのため、悪玉菌より善玉菌が多い、腸内細菌バランスを整える生活を送ることを日頃から心がけ、免疫の過剰反応を抑え花粉症を予防していきましょう。
日常の生活で腸内細菌バランス整える
1.食事
善玉菌を増やすためには、善玉菌を含む食品を摂取しつつ、善玉菌の餌もしっかりとることです。
●善玉菌の摂取 :乳酸菌(ヨーグルト・乳酸菌飲料、キムチ・ぬか漬け・納豆・サワークラウト等の発酵食品)
●善玉菌の餌の摂取 :食物繊維(野菜・豆類・海藻・きのこ類・イモ類など)
:オリゴ糖(バナナ・はちみつ・きな粉・大豆・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラなど)
●摂り過ぎにならないよう注意
腸に優しい食事をするとともに、悪玉菌を増やしたり腸に負担をかけたりすることも控えるよう心がけましょう。
*控える:過剰なタンパク質・脂質・単純糖質・アルコール・加工食品
2.自律神経を整える
腸の働きをコントロールしているのも自律神経です。交感神経が優勢になると腸の蠕動運動は低下し、副交感神経が優位になると蠕動運動も活発になります。
現代人のライフスタイルでは、仕事やプライベートにおける「精神的なストレス」はもちろん、残業や睡眠不足、運動不足、パソコンやスマホの使用などの「身体的ストレス」さらに季節ごとの天候の変化や異常気象による気圧差・寒暖差など「環境的なストレス」までもが常につきまとい、自律神経が乱れて交感神経優位の状態なりがちです。すると、腸の動きが悪くなり、消化ができず食物が停滞してしまい、腸内環境も悪化、体力、免疫力すべて下がってしまいます。以下のような生活を心がけ、腸内環境を良くするために自律神経も整える生活を心がけましょう。
●夕食は遅くとも夜9時前に終えるのが理想。腹八分目、消化に良いメニュー
夕食を早めにとることで副交感神経のバランスを高めます。
副交感神経の働きを高め腸内環境を整えるには、夕食を食べ終える理想時間は、就寝の3時間前、夜9時までを目安にしましょう。
食後3時間、とりわけ夕食後の3時間は副交感神経が活性化し、消化・吸収が盛んになる「腸のゴールデンタイム」です。
もし、 夕食の時間が 9 時を過ぎてしまうのであれば、量を抑えましょう。目安は「腹八分目」中身も軽めにしましょう。炭水化物メインのメニューは避け、低脂質の魚や肉と野菜中心の食事にして、遅い夕食のデメリットを最小限に抑えることができます。
●睡眠
眠っている間は、副交感神経が優位になり、リラックスした状態になり、その間に腸の大蠕動(激しく動き、通常の腸の動きの便を押し出す速さの200倍)が行われるため、睡眠不足になると自律神経の乱れに直結し、腸の働きも乱れがちになります。そして、食べ物が腸に停滞して、悪玉菌増殖の原因にもつながります。質の良い睡眠をとれるよう、就寝前にはリラックスした状態で、心地よい睡眠環境を作り就寝しましょう。
●ストレスの解消
ストレスが交感神経系を過活動にし、胃腸の動きを低下させて、消化液の分泌低下、腸の蠕動運動低下など引き起こし、消化力を落としてしまいます。すると、腸内で悪玉菌が増殖しやすくなる原因となります。
人と関わるときは、心身が安定していて協力的で気分を良くしてくれる人と関わる機会を増やし、会うと気分が悪くなるような人との接触はやめるか、最小限にしましょう。
生活のスピードを緩められるときは緩めましょう。
中強度の有酸素運動をしたり、ストレッチやヨガ、太極拳、瞑想などで酸素をしっかり取り込み脳への血流良くして、安全、リラックスモードにしてくれる副交感神経の働きを高めるようにしましょう。
文責/桑原医院 管理栄養士 坂井エリサ(さかいえりさ)