小児科・内科 桑原医院

広島市安佐南区の小児科・内科 地域のホームドクター「桑原医院」

管理栄養士のレシピ集

第44回 りんごのアレコレ話

 りんごは昔から世界中の国々で愛され、多くの人々に食されてきた果物です。ヨーロッパでは古くから「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」といわれてきました。
 風邪の時など体調の悪い時、よくリンゴが登場してくるイメージがありますよね。
 そんなりんごの効能について、今回はお話します。

りんごの栄養

 りんごのビタミンは少ないのですが、ミネラルのカリウム、食物繊維、100種類以上のポリフェノール(ほとんどの植物に含まれ、光合成によってできる色素や苦み成分)が多く含まれています。

★食物繊維★

 りんごには「ペクチン」という水様性食物繊維が豊富に含まれます。
 これは腸内を酸性にしてビフィズス菌をはじめとする善玉菌を繁殖させるとともに、有害菌の繁殖を抑えてくれるので、下痢に有効です。
 また、ペクチンは消化されないので、腸内をきれいにして有害物質の排出を促進することから、便秘を解消させる働きもあります。

★カリウム★

 カリウムは、細胞の浸透圧をナトリウムと共に維持、調整する働きがあり、体内に溜まった余計な水分、塩分排出を促します

★りんごポリフェノール★

 りんごには100種類以上のポリフェノールが含まれています。一つの果物に3種類以上のポリフェノールが含まれているものは珍しく複数のポリフェノールを持つことにより抗酸化性が高くなります。
 すると、体の中での細胞の傷害を予防したり、遅らせたりする力が増加し、病気や老化予防につながります。

りんごと風邪

 りんごは、直接風邪ウィルスに働きかける栄養素こそ入っていないものの、風邪の時に食べるとよい果物として知られています。
 その理由は、りんごは全体の8割が水分で程よく糖分も含まれていることにあります。風邪をひいて熱があるときには、食欲が低下していることが多く、子どもでは特に低血糖状態になりがちです。りんごは、糖分が含まれているため美味しく抵抗なく水分とエネルギー補給ができます。
 また、吐き気や下痢などの症状の際には脱水症状を防ぐためにも水分補給が必要です。ある程度症状が落ち着いてから、体力回復や栄養補給のために食事が必要で、回復食として「りんご」は効果的です。食物繊維効果で腸の働きを活発にし、消化吸収を助け整腸作用を促してくれます。りんごは水分と共に整腸作用もあるため症状の軽減が期待できます。
 これらのことより、りんごは風邪に直接的な効果はありませんが、風邪の時に起こる体の不調を補ったり、整えたりする効果はあると言えます。

りんごは皮ごと食べた方がよいのか

 皮と実の間に前述した栄養素が、りんごの実の部分以上の栄養が豊富なため、胃腸が悪い、歯が悪い、吐き気があるなどの場合を除き、健康な方であれば、皮ごと食べることをお勧めします。

皮ごと食べるといっても、農薬やワックスが心配?

◎農薬
 りんごは、無農薬で作るのが難しい果物です。
 しかし、日本の残留農薬基準は世界一厳しいので、通常なら人体に影響でない量に抑えられています。また、日本では、収穫後の農薬散布は禁止されていますので、その点でも安全性は高めです。普段の1日1~2個程度を食べるくらいでは、問題ありません。
 ★ただし、輸入品には日本で禁止されている農薬が使われていることもあります。
 検疫所で日本の基準を満たしているかのチェックはあるようですが、皮ごと食べるなら、やはり安全性の高い国産のものを選ぶ方が無難です。
◎ワックス
 りんご表面のテカテカは、ワックスがついているように思えますが、日本ではリンゴへの人工的なワックスの使用は認められていません。これは、リンゴ自身が出した油の膜です。リンゴが熟してくると、リノール酸やオレイン酸などの脂肪酸が増加し、これがリンゴの皮に含まれているロウ物質を溶かしていき、徐々に表面に出てきて膜を作ります。これが、りんごの水分が蒸発して乾燥してしまうのを防いでくれます。
 以上の事から、国産リンゴは農薬基準が厳しいこと、人工的なワックスが使われていないため、安心して皮ごと食べられます。
 ただ、それでも気になるなら、農薬も落とせる野菜・果物用洗剤を利用して洗うのも一つの方法です。

りんごの食べ合わせの悪いものは?

 りんごにはほかの食品のビタミンCを破壊してしまう酵素が含まれています。そのため、ビタミンCの多いフルーツ(柑橘類、キウイなど)で作るミックスジュースは栄養効果を減らしてしまうという意味で食べ合わせが悪いといえます。ただ、食材の細胞を破砕して混ぜるようなものでなく、食材同士の触れる面積が少ないのであれば、(カットフルーツとして食べるなど)そこまで、神経質になる必要はないと考えます。

 

文責/桑原医院 管理栄養士 坂井エリサ(さかいえりさ)