小児科・内科 桑原医院

広島市安佐南区の小児科・内科 地域のホームドクター「桑原医院」

管理栄養士のレシピ集

第40回 熱中症予防

 夏の暑さが本格的になってきました。今年は35℃を超えるような日が続く暑さで熱中症になる方も増えてきます。
 思春期前の子どもは汗腺をはじめとした体温調節機能が、まだ十分に発達していないために、高齢者と同様に熱中症リスクが高くなります。

 熱中症予防のための、環境・体の状態・行動を整えることは勿論、きちんとした食事をとり、適切な水分補給をすることも必要です。夏は暑さで食欲が落ちたり、バテ気味になりがちです。そこで食事を抜いたり、さっぱりとした、口当たりのよい麺類や冷たいもの、デザートといったものに偏りがちになっていませんか?水分をこまめに摂るとともに、きちんと食事をとることも、熱中症予防になります。

熱中症に負けない体作り

① 朝食を抜かない
 もし、欠食すると、とるべき栄養分と水分が摂取できません。睡眠中に汗をかいて、起床時は脱水状態になっていることもあります。規則正しい食事も熱中症対策になります。
② 栄養は、まんべんなくとる
 体力を低下させないために、疲労回復に効果的な栄養素であるクエン酸や、ビタミンB1、水分を保持する働きのあるカリウムを含む食材を食事にしっかり取り入れましょう。
・クエン酸:梅干し・レモン・グレープフルーツ・オレンジなどの柑橘類
・カリウム:緑黄色野菜・トマト・バナナなど
・ビタミンB1:豚肉・うなぎ・大豆・ゴマなど
③ 二日酔いに注意
 アルコールはその分解に、水分を大量に使うことに加え、利尿作用があるため、飲酒後の翌朝は普段よりも脱水状態になりがちです。

 

水分補給の方法

 より効果的に水分補給するためには、水分補給のタイミング、飲料の温度、飲料の種類を正しく選択することが重要です。

① タイミング:・喉が渇く前が理想的。
 体格や食事内容にもよりますが、食べ物に含まれている水分を除き、飲み物から最低でも一日1200mℓ程度の水分を摂ることが必要です。
 グラス1杯180㎖で1日7杯程度、湯飲み1杯150㎖で1日8杯程度、生活リズムに合わせて、こまめな水分補給をしましょう。
 自分で判断のできない子供は「好きな時間に」、喉の渇きを感じにくくなっている高齢者の場合は「時間をきめて」水分補給をするようにしましょう。
② 飲料の温度:十分量の水分を摂取することが最も大切なので、水分補給が苦痛にならないよう飲みやすい温度の飲料でも可能です。
③ 飲料の種類
 アルコール飲料以外であれば飲みやすい飲料で。カフェイン飲料は利尿作用があるため、日常的に水分補給のための飲料として適切ではないといわれることはありますが、日常的に緑茶やコーヒー、紅茶、コーラ、ココアなどのカフェインを含むものを摂取している場合は、利尿作用への影響は少なく、水分補給として有用だと報告されています。
 ただし、子どもは体重が軽いため、少ないカフェイン量でも中毒症状を起こしやすくなります。コーヒーなどに砂糖や牛乳を混ぜてもカフェイン量は減少しません。子どもは、できるだけカフェインが少ない飲料を飲ませるようにしてください。

脱水症の改善と治療

 脱水症に対する水分補給は、その目的に応じて適切に選択することが大切です。

・脱水症の改善、治療目的
 水分吸収速度が非常に早い経口補水液OS-1(塩分多め・糖分少な目)が有効
 ただし、カリウムや塩分濃度が高いため、腎臓病や心臓病の方は注意が必要です。
・脱水症予防
 スポーツドリンク(経口補水液に比べて、塩分が少な目で糖分多め)
ただ、スポーツドリンクは糖分が多いため、デスクワークだったり、あまり体を動かさなかったりする方はお水や麦茶などで大丈夫です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑さ指数(WBGT)も気にかけましょう

 熱中症の危険度を判断する数値として環境省がホームページで都道府県各地のデータを情報提供しています。

・暑さ指数(WBGT)

 =人間の熱バランスの影響の大きい①気温の効果②湿度の効果③輻射熱の効果を取り入れた温度の指標です。

*それぞれの暑さ指数に与える効果割合は、気温1:湿度7:輻射熱2で、特に湿度が大きく影響しています。
それは、湿度が高い場所では、汗が蒸発しにくいので、身体から空気へ、熱を放出する能力が低下するので、熱中
症になりやすくなるためです。

 このWBGTが28℃を超えてくると、熱中症になるリスクが高くなってきます。自分の 住んでいる地域のWBGTを確認することもできますので、チェックしてみましょう。

 

 日常生活に関する指針

 温度基準 
(WBGT)
 注意すべき 
生活活動の目安 
 注 意 事 項 
危険
(31℃以上)
すべての生活活動でおこる危険性

高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。

外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。

厳重警戒
(28~31℃※)
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒
(25~28℃※)
中等度以上の生活活動でおこる危険性 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
注意
(25℃未満)
強い生活活動でおこる危険性 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

※(28~31℃)及び(25~28℃)については、それぞれ28℃以上31℃未満、25℃以上28℃未満を示します。
日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.3」(2013)より

 

文責/桑原医院 管理栄養士 坂井エリサ(さかいえりさ)