小児科・内科 桑原医院

広島市安佐南区の小児科・内科 地域のホームドクター「桑原医院」

管理栄養士のレシピ集

第8回 「冬瓜なます」

~日本の伝統野菜を食卓に~

「畑で、おしろいを塗って寝ころがっているもの、なーに」「トウガン(冬瓜)」と、なぞなぞごっこをしていた中年からの日本人にとっては、懐かしい夏野菜。
熱帯アジアの原産でウリ科のトウガンは、中国には三世紀以前に伝わり、冬まで貯蔵できることから、冬瓜とよばれました。日本には平安時代以前に伝わり、カモウリ(氈瓜)と呼ばれました。カモは 毛氈(もうせん)のことで、実の若いうちは、柔らかい毛でおおわれているところから、この名がつきました。今も京都ではカモウリの名が残っています。熟すと白いろう状の白粉をかぶります。旬は夏ですが、貯蔵したものが冬まであり、春はハウス物も出ています。
トウガンの栄養量はキュウリに似ていますが、持ち味が清淡で、香りも青く清涼感があります。熱くても、また冷たくてもおいしいものです。利尿効果があるので、昔は腎臓病治療に利用されました。組み合わせる素材や調理法、加熱時間によって、風味がぐんと引き出されます。この特徴を生かして、さまざまに変化するトウガンの美味しさは不思議なくらいです。煮る時は柔らかくゆでて、あん掛け料理、汁物、蒸し物などに向きます。トウガンが大きすぎて残りそうな時、もう一品「お生酢」を作り、一俵を使い切るのもいいですね。では、同じトウガンの繊切りで、2品のお生酢を作ってみましょう。

材料

冬瓜なます

◆冬瓜なます 材料(5~8食分)◆
トウガン……………………… 5cm長さの輪切り1切れ
                                        (正味400g)
*三杯酢……………………… トウガンの10%(40ml)
**サンマの酢の子…………… 上身1枚分(50g)
***ミョウガ(茗荷)の酢漬け… 少々

◆*三杯酢(常備用)◆

米酢…………………………… カップ1/2(100ml)
砂糖…………………………… 大さじ4杯(40g)
みりん………………………… 小さじ1/2杯(3g)
薄口醤油……………………… 大さじ1杯(15ml)
トレハロース………………… 小さじ1/2杯(2g)
2番だし……………………… カップ1/2杯(100ml)

◆**サンマの酢の子◆

生サンマ……………………… 1尾(200g)
粗塩…………………………… 大さじ3杯(45g)
常備三杯酢…………………… トウガンの10%(40ml)

◆***ミョウガの酢漬け(常備用)◆

ミョウガ……………………… 5個(100g)
粗塩…………………………… 4g
甘酢 砂糖…………………………… 大さじ2杯(20g)
米酢…………………………… カップ1/2(100ml)

準備

  1. 三杯酢を作っておきます(分量は*を参照)。 三杯酢の材料を鍋に入れて火にかけ、砂糖が溶けたら鍋ごと氷水で急冷して、ビンなどに入れておきます。
  2. サンマの酢の子を作っておきます(分量は別表**を参照)。生サンマのうろこを軽く取り、頭を落として3枚に卸します (上身100g)。粗塩をまぶして30分置き、さっと水洗いし腹の身をすいて中骨を抜き、薄皮をはがして3ミリ巾に刻み、分量の三杯酢に漬けておきます。
  3. ミョウガの酢漬けを作っておきます(分量は別表***を参照)。 ミョウガは、洗って水気を切り、塩を振って容器に入れ、重石をして半日置きます。水気を切って、分量の砂糖と米酢を煮溶かして冷やした甘酢に漬けます(多めに作り冷暗所に保存すれば薬味として重宝)。

作り方

  1. トウガンの皮をむき、ワタを取って5cmの長さの輪切りにして、マッチ棒くらいの繊切りにします。
  2. (1)を塩もみします(トウガンの2%の塩をして10分くらい置き、さっと洗って水気をぎゅっと絞ります)。
  3. 準備したサンマの酢の子で(2)を和えて小鉢に盛ります。
  4. (3)に、ミョウガの酢漬け(または生)を繊切りにして天盛りします。

ポイント

  1. トウガンの繊切りは5cmくらいの長さが挟みやすく、歯切れのよさが楽しめます。トレハロースを入れると、しゃきしゃき感が一層増します(なければ入れなくてもよろしいです)。
  2. 小鉢に少なめに盛るとおもてなし風に、たっぷり盛ると、お惣菜風になります。
  3. サンマは酢じめにして1~2日置けますが、皮が薄いので、薄皮をはがしてから、三杯酢をさっとくぐらせて保存します。
  4. サンマを刻むときは、皮面を上側にします(美しい皮が、まな板に付かないため)。
  5. サンマは、新鮮な生を選びます。

応用

  1. サンマのない季節は、アジを酢じめにして使います。アジは皮が厚いので、酢じめにした後、1~2日置いてからでも楽に薄皮がはがせます。
  2. 三杯酢は、多めに常備しておけば、色々なお生酢に利用できます(唐辛子が入っていないので、子どもにも向きます)。

材料

◆ブドウ風味のフルーティなトウガンのお生酢 材料◆
トウガン……………………… 正味400g
常備 三杯酢…………………トウガンの10%(40ml)
白ごま………………………… 少々(3g)
ブドウ(デラウエア)…………5~40粒(5~40g)

作り方

  1. 三杯酢を作っておきます(その1と同じ)。
  2. トウガンを繊切りにして塩もみしておきます(その1と同じ)。
  3. 白ゴマは切りゴマにしておきます。
  4. (2)を(1)で和え、(3)をまぶして小鉢に盛ります。
  5. (4)の上に、デラウエアの皮を取りながら飾ります。

応用

  1. ブドウの粒が大きいときは、輪切りにします。
  2. 小鉢に少なめに盛るのがトウガンの個性に合っていますが、好みによってブドウを多く飾ると、よりフルーティになり、子どもも喜びます。

ポイント

  1. 白ゴマを切りゴマにすることで風味が増します。
  2. デラウエアの皮を取りながら出る汁も掛けます。

メモ

ひと手間かけた小さなオカズ、トウガン生酢は、彩りを増して楽しい食卓になり、栄養のバランスもとれて、大きな役目をしてくれます。いま健康志向の高まるなか、低エネルギーで健康食品というイメージから、家庭でも見直されようとしているトウガン。料理を工夫しながら、生き延びて欲しい野菜です。子ども達にも伝えていきたい伝統野菜です。

文責/桑原医院 管理栄養士 鎌田澄江(かまだすみえ)