小児科・内科 桑原医院

広島市安佐南区の小児科・内科 地域のホームドクター「桑原医院」

管理栄養士のレシピ集

第32回 夏の食中毒予防

 高温・多湿のシーズンになってくると、冬場とは違う原因で、体調不良が起こり始めます。そのうちの一つとして、夏場の下痢や嘔吐、それも長く続く傾向があります。夏ならではの病気と対策についてお話します。

1.夏の下痢や嘔吐が続く原因

⑴感染性胃腸炎

 ウィルス、あるいは細菌などの病源体が原因になり、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの急性の胃腸炎症状を引き起こします。その結果として、様々な程度の脱水、電解質喪失症状、発熱など、全身症状が加わるものを感染性胃腸炎といいます。
 主に夏場に見られる細菌性胃腸炎は食中毒菌が原因です。主な細菌はサルモネラ(特に鶏卵)、腸炎ビブリオ(魚介類)、カンピロバクター(肉類)、病原性大腸菌(牛肉)などです。
 夏風邪が原因のウィルス性胃腸炎は、主にエンテロウィルスやアデノウィルスが多いようです。
 年長児や成人では細菌性腸炎の頻度が高いのですが、乳幼児ではウィルス性腸炎が圧倒的に多くなり、1歳以下の乳児では症状の進行が早く、乳児嘔吐下痢症と呼ばれます。


⑵夏バテによる胃腸の機能低下

 夏場は暑さや発汗で体に疲れがたまりやすく、これが原因で胃腸も弱りがちです。そこに、急に冷たいものばかりを流し込むと負担が大きいので急性胃腸炎の誘因になりやすいです。

2.対策

①食中毒予防

 細菌性の食中毒予防を行うには、Ⓐ人の健康管理Ⓑ食品の購入から食べるまでの衛生管理©キッチンの衛生管理が必要です。


A.人の健康管理について

細菌性の食中毒は誰でもかかるわけではありません。
同じ食品を摂取しても一般に発症率は30%程度です。これは、免疫力の有無に関連しています。
常日頃、バランスの良い食事をすること、適度な運動をし、適度な休養・睡眠をとり、免疫力を下げないようにしましょう。
また、細菌性の食中毒を広める可能性のある手洗いは、1~2秒でなく、20秒間くらいを目安に指の間、手首までくまなく洗うことが大切です。


B.食品の購入から食べるまでの衛生管理

①食品の購入に当たっては、消費、賞味期限の表示を確認し、生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。
②買い物から帰宅した後は、冷蔵・冷凍庫に保存すべきものはすぐに保存しましょう。
③食肉食材は72℃、5分以上の加熱(肉の上から押した場合、肉汁が透明であれば、良い)をしましょう。
④生野菜は、流水で十分洗浄しましょう。
高温・多湿時は抵抗力の弱い人は生鮮食品の生食は避け、加熱食品を摂取することが、のぞましいでしょう。


C.キッチンの衛生管理

①食器や布巾・スポンジは夕食の片づけ時に十分洗浄後、熱湯をかけ、十分乾燥させましょう。
②冷凍・冷蔵庫の衛生管理としては、食品の庫内への詰込みは70%程度にしましょう。
③冷蔵庫は1か月に1度は整理整頓と共に掃除をしましょう。
④冷蔵庫は庫内の場所によって温度帯が異なります。適した場所に保管しましょう。

  • ・冷蔵室(3~5℃):すぐに使用する食肉、生鮮食品を保存します。
  • ・チルド室(0℃):チーズ・ヨーグルトなどの乳製品、練り製品、納豆等
  • ・パーシャル室(-3℃):食肉・魚・刺身等
  • ・冷凍室(約-18℃)家庭で冷凍したものは、1か月以内に使いきるようにしましょう
  • ・ドアポケット:周囲の温度の影響を受けやすいので、調味料、あまり温度に左右されない食品をいれます。
  • *頻繁なドアの開閉は庫内の温度上昇の原因となるので、開ける前にどこから取り出すのか考え、特に夏季の開閉は最小限になるようにしましょう。
  • *食品を冷凍、冷蔵に保管しておけば微生物は増殖しないという考えは改めましょう。微生物は一休みしているか、低温性の細菌などは逆に増殖するので、冷凍、冷蔵庫の過信は禁物です。

②夏風邪予防

 夏場でも、普段から手を洗い、うがいするようにしましょう。免疫力を落とさないように、日々睡眠や栄養をしっかりとり、適度な運動で規則正しい生活を心がけて病気にかかりにくい体力づくりをしましょう。


③胃腸をいたわる

 急性胃腸炎になったら、しばらくは、冷たいものは避けて、消化の良い温かいものをゆっくり噛んで食べます。味の濃い物、辛い物など刺激物は症状が改善しても避けた方がよいです。完全に回復するまでは、胃腸にやさしい無難な食生活をしましょう。

文責/桑原医院 管理栄養士 坂井エリサ(さかいえりさ)